昔、写友に連れられて行った子安付近の川沿いの漁師町、ひなびた印象があったので思い出しながら行くことにしました。午後一番に家を出て京急「神奈川新町」で降りて国道を渡ると目当ての入江川に出ました。
この川は海に近く船着き場に適していたらしく川岸には建物が並んでいてその裏は川に繋いだ船に乗り込めるようになっています。只、現在は漁業や船に関した仕事をしている人は少なくなってほとんどが車庫になっていました。近くには高層ビルなどが出来ていて新旧の色が強く出ている所でもありました。
建物の間を通って川岸に出ると今でも船はぎっしりと繋いであって興味は尽きないほどに写欲がそそられます。絵を描く人達も同じなのか建物が切れた川沿いに男女の人達が写生をしていました。
今ではほとんど車庫になっている昔の船着き場の建物や船、猫やカモメなど撮りながら歩いてくると赤い車を洗車している若者がいました。若者は撮影の邪魔をしたと思って「すみません」などと言っていたので「違いますよ、ちょうど撮らせて頂いた所です」と言って話をしました。「この辺はごちゃごちゃしているでしょう」と言っていたので「それがいいんですよ」等と話している内に「撮った写真はHPなんかに載せるんですか?」と聞かれ「そうなんですよ、いろんな所に行って撮っていてHPに載せています。良かったら見てください」と言って名刺を渡しました。「これも何かの縁だから今度見てみます。」と快く、言ってくれました。その節は有り難うございました。
入江川にかかった橋から川岸を眺めると川岸にはぎっしりと船が停留されていて古びた建物が並んでいます。しかしその回りは高速道路や近代的な高いビル群に囲まれていてその対比が又、独特な雰囲気をかもし出しています。人の姿はあまり見かけられず静かな日曜の午後でした。
建物と建物の細い所をくぐり抜けては写真的な川岸や船等を探して出たり入ったりを繰り返しています。川岸に出るとここの持ち主であろう老人が椅子に座ってじっと船や川を眺めていました。丁度、現役時代を懐かしく想いながら日向ぼっこをしているような姿に見えて2枚ほど写真を撮ってから話しかけました。「こんなに船があっても実際漁業をしている人は少なくなっている」と言っていました。最後に「写真を撮らせてください」と言って撮らせてもらいましたが最初に撮った写真にはかないませんでした。
この川には廃船のまま川に沈みかけている船が何艘も見られ、川岸の建物の土台の杭はぼろぼろになっています。こんな光景は昔、鶴見川沿いの生麦にも見られました。貝塚などもあって一部の写真愛好家の撮影場所になっていましたが今では撤去させられて面影も無くなっています。川岸に沈んでいるタイヤや廃物などもあり、物の哀れみを感じさせられる物も多くので写真は撮れますが果たしてうまく表現できるのか疑問です。
ここは人は居ませんでしたが現在漁業をしている家らしく計りや机、椅子なども置かれ作業場という雰囲気が出ています。漁業をやっている船には船頭さんも乗っていてなにやら準備か点検などをしている姿も見かけられました。又、ウナギ漁をしているのか仕掛けの筒が一杯積んである船もありました。漁業の他は赤提灯を船の回りにぶら下げた屋形船なども停泊していて静かながらも生活の面影も沢山見られます。
子安通りの川岸に船の修理工場であっただろう建物がありました。線路の引っ込み線があり川岸から台車に乗せて船を出入りさせ修理をしていた工場も今は廃業しているようです。こんな特徴のある船着き場もこの先でほとんどなくなってしまいます。時代に流され時代に乗ってどんどん変わりながらもまだまだ昔の面影を残しているこの入江川付近は貴重な歴史が感じられました。
先ほどの子安通りの修理工場跡から国道に出て近くの公園で一休みをして又、同じ場所を戻りながら撮影して来ました。京急「神奈川新町駅」近くの入江川付近の町名は浦島町と言ってユーモアを感じさせられます。来るときは影になっていたので気が付かなかったけれど公園には波形のコンクリートの海に亀に乗って竜宮城を後にする浦島太郎の絵が書いてあって、公園の名前も浦島町公園でした。時間も5時過ぎになっていて撮影を終わるのにも丁度いい時間です。近くでこんな特徴のある場所を思い出して今日も楽しい撮影ができました。