自由な時間が持てたら一人で気ままな撮影旅行に出かけたいと思っていました。行きたいイメージは日本海のひなびた漁港、イメージ的な所はあまり無いと思うのですがやはり気になります。梅雨に入る前の6月初旬と言うのが計画でしたが今年は5月から梅雨のような天気の連続、まあ雨でもしょうがないと決心して6月6日(火)の午前9時過ぎに家を出ました。
横浜から第三京浜道路を通って環状八号線に出て関越道路に入り新潟の出雲崎に着いたのは午後5時頃でした。途中、関越トンネルを出て新潟に入った頃に雷を伴う大雨が降った時もありましたが少し走ると晴れていて出雲崎漁港はまだまだ太陽が上の方でした。閑散としていて人影も見あたらない静かな漁港で道路に面した海沿いの古い漁具などを入れる小屋のたたずまいが日本海的な印象でした。漁港や海岸を探しながら海辺で太陽の沈む姿を撮って第一目の撮影は終わりました。
地図で見るとこの先は新潟市なので夜の内に新潟市を越えて少し行ってから今夜の寝るところを探そうと走りました。さすがに新潟市は大きな都市です。街に入ると車も多く道も複雑でなんとか街を出て又、静かな海沿いの道に出ました。道路沿いのラーメンやで腹ごしらえもして海沿いで車を止められそうな所に入り、車のシートを平らにして寝床の準備、これならゆっくり寝られそうです。(撮影は7日朝)車での初めての泊まり、ハードディスクウオークマンで音楽を聴きながら一杯飲んで11時頃眠りにつきました。7日朝5時頃目が覚め、外を見ると今日も天気のようです。
昨日泊まった所は暗い中で適当に探したのではっきり何処だったのか分かりませんが山形県には1時間少しで入るという所でした。朝5時頃起きて5時半頃には車で走り出し、途中海岸沿いの小屋や建物、漁船の修理工場などの船を撮ったりしながら8時頃着いた漁港では一組の夫婦がふぐの加工をしているのが見えました。主人が船で前日仕掛けて置いた網を引き上げてきて網から取ったふぐを奥さんが解体しているところでした。もう少し早く来ていたらもっと良かったと思いましたがこんな光景は少ないし撮りたっかた被写体です。ふぐの皮を剥ぎ、内蔵と血と身に分けて綺麗にさばいていました。漁港名は山北町漁港(新潟県)と書いてありもうすぐ山形県のようです。
ふぐ漁の山北町漁港を出て勝木漁港、米子漁港、加茂漁港(いずれも山形県)を撮影して午後に秋田県の吹浦漁港、象潟漁港を撮影しながら夕方には金浦漁港にたどり着きました。初めての日本海なので漁港を探しながらの早旅という感じです。途中、午前11時頃ににわか雨が降り米子漁港では雨の漁具などを撮り加茂漁港ではカモメ、隣の象潟漁港は鯛の水揚げなどを撮りながらここ金浦漁港まで来ました。ここは漁師の人々はあまり見られず防波堤の先には釣り人たちが多くいました。太陽も低くなってきて夕映えの漁港が綺麗です。太平洋と違って日本海は海に太陽が沈む姿が撮れるのもあこがれの一つでした。
防波堤があっては何の価値もないので釣り人の居る防波堤の先まで駆けながら行きましたが海だけで手前に絵になるような島などもなく又、慌てて戻ってきました。手前に灯台を入れシルエットにして太陽の落ちる姿や夕映えの漁港に浮かぶ船などを夢中で撮っている内に太陽はあっという間に雲に沈んでしまいました。結局、太陽は霞んだ雲に隠れてしまったので防波堤の先で撮っても海に沈んだような写真は撮れず神奈川の三浦半島で撮ったのと大差なかったと思い、戻ってきて大正解でした。
前日、金浦漁港を撮影し泊まるところを探しながら本庄市に来ました。子吉川を渡った河川敷に市営の駐車場がありトイレも付いています。後は食事と風呂にでも入りたいと思い街に入りましたが銭湯は無く教えてもらった所は旅館の風呂でした。ちょっと迷った結果、今日は我慢することにして食事をとり駐車場に戻りました。8日朝は4時頃目が覚め、ゆっくりと準備をして5時半頃出発しました。すぐに松ヶ崎漁港に着き、海沿いの古びた小屋や海を見ていた老人を撮影して次に来たのが道川海岸でした。海岸を見るとゴミの山です。びっくりしたやら驚いたやらで撮影意欲が俄然出てきました。まずはゴミを撮り、海岸の端の方は漁港になっているみたいで漁船も4.5隻ありごみとの対比で珍しい光景です。流れ着いてきた物から便乗して捨てたと思われる大きな冷蔵庫やテレビ、タイヤ等。この海岸は海水浴場になっているので夏前には綺麗に掃除しなければならないと思うと大変な作業だなあと思いました。
ゴミの道川海岸を撮影後、秋田市をぬけ男鹿半島に入り初めての漁港、船川漁港に着いたのは昼頃でした。一組の夫婦が船の上で網から魚を外す作業をしています。網から魚を外す作業などはほとんど船の上でやるので海辺で作業をやっていたふぐ漁などは貴重な撮影でした。一人の老漁夫が船を出そうとしていたので話をかけ撮らせて貰いながら雑談しましたがここ最近は漁も減って油代が上がっているので割に合わないから船を出す人も少なくなっているとの事でした。ここまで来る途中でも油代が高くなって大きな船で毎日漁に行っている船も漁に行ったその日は帰らず海に一泊して次の日に帰り、一回分の油代を節約していると言っていた船もありました。どんな業種でも厳しい時代になっているのが良く分かります。
船川漁港、椿漁港を撮影し門前漁港に来ました。漁港沿いに旅館があり今日あたりは旅館に泊まろうかと思っていたので早速、予約をして又、先の漁港をめざしました。途中の高台に大きな駐車場付きの食堂が並んだ所がありました。時間も2時半頃で昼食をと思い、桜島苑というお店に入りました。時間的に他のお客は居なく海が見える眺めのいい窓際に座ると店の主人が話しかけてきます。北海道出身の主人は北海道と秋田のいい素材を吟味して海鮮料理を出しているのが自慢のようでした。海鮮ラーメン(1000円)を注文して出てきたラーメンを見てびっくり、鯛の尾頭付きと大きな海老、ホタテが入っています。びっくりしながら食べ初めましたが慌てて崩れた盛りつけを作り直してちょっと見栄えが悪くなった海鮮ラーメンを撮影。主人といろいろ話しながらゆっくり昼食をとって次の戸賀漁港に行きました。戸賀漁港では老漁夫を撮らせて貰ったりして5時頃になったので時間的にも旅館のある門前漁港に戻ることにしました。7時前に風呂に入りこれから食事です。風呂はさっきこの漁港を撮っている時は外から見えるので団体客なのか大勢居ましたが今は一人でのんびり、ゆっくりです。食事の広間に行くと料理が出てきてこれが又びっくり、こんなに食べられるわけないと思うのにまだ出てきます。知りませんでしたがこの旅館は今、「鯛祭り」ということでインターネットで見てきたという山形のご老人も居ていつもより料理が多いらしいのです。ビールを飲みながらその老人と話しもして全部は食べられませんでしたがなるべく無理して料理を食べました。隣の主婦ずれのグループはしっかりお土産風にして持ち帰っています。なにはともあれ満腹、満腹。
朝、4時半頃起きて表に出るとすごい風が吹いています。前日の話ではこの門前漁港では網を仕掛けている漁師は少ないとの事だったので先の加茂漁港に行きました。漁港には人も少なく、居た人に漁の事を聞くと「低気圧が来ていて、こんなすごい風なので今日は誰も漁に出ない」との事でした。「もう少し先の漁港なら山の反対側になるのでどうかな?」と言われ昨日も行った戸賀漁港まで行く事にしました。戸賀漁港では3組ぐらいの漁師たちが作業をしています。昨日撮らせて貰った老人も今日は網から魚を外したり漁を手伝っています。この漁港の少し先で近くに仕掛けてある網なので今日も仕事が出来るとの事でした。写真を撮らせて貰い朝の食事時間に間に合うように戻ることにしました。途中の山中で車の前を一匹の狐が道路を横断しました。慌てて車を止め、振り返ると狐もこちらを見ています。カメラを構えながら寄っていくと歩き出し又、振り返って見ています。すぐに逃げて行くわけでなく距離を取りながら興味深げにこちらを見ているので又近づくとさっと身を翻して今度は藪の中に逃げて行きました。可愛い野生の狐を撮れたこともなんと運がいいんだろうと思いながら旅館に戻りました。
旅館に7時頃戻り朝食を取り、「ゆっくりして10時頃、旅館を出たい」とお願いして戸賀漁港で昨日と今朝撮った老人の写真を持参したキヤノンピクサス80iプリンターでプリントして10時頃旅館を出ました。今回はパノソニックCF−W2モバイルノートパソコンとキヤノンピクサス80iモバイルプリンター、バッファローダイレクトステーションポケットというストレージを持って撮影データはストレージに保存し必要なときにはすぐプリントして本人にあげられるようにと準備しての撮影旅行です。外は朝の内は風だけだったのがもう雨も降っています。戸賀漁港まで来て漁港にいた人に写真のおじさんの家を聞くとすぐ近くの民宿でした。ちょうど出てきた人は写真のおじさんだったので昨日の写真と今日の写真をあげたらびっくりしながらも大変喜んでくれました。これは後で写真を送るより面倒くさくもなくすぐに喜んで貰える顔も見れるし思った以上の効果でした。
戸賀漁港から入道崎に来た頃には昼近くになっていました。雨も小降りになっています。灯台や野の花を撮ったりしてお土産屋兼食堂でゆっくり食事をして次の漁港に向かいました。入道崎の外れに畠漁港をいう道しるべがあります。こんな近くに漁港があるんだと思いながら下に降りていきました。漁港には誰も人が居なく。しっとりと雨に濡れた風情が又、趣があります。今日は人の居ない、雨に濡れた漁港や漁具を撮ることにして丹念に漁港を歩くことにしました。この漁港は端の方に行くと草に覆われた高い岩場に囲まれていて今までにはない風情のある光景です。次の漁港を探しながら少し行くと下の方に漁港が見えます。降りていくと又、畠漁港と書いてあり先ほどの漁港からあまり離れていないので同じ名前の漁港のようです。やはりここも人が居なく又、雨の漁港を撮りながら次の漁港に向かいました。畠漁港から少し離れますが地図にもでている北浦漁港をめざして走ります。この漁港で男鹿半島の漁港は終わるのでこれからどうしようかと悩んでいました。
この辺は漁業組合が土曜日休みのため明日は一斉に漁は休みらしいのです。ここ2.3日男鹿半島に腰を落ち着けて撮影しようかなと思っていましたが今日は人の居ない雨の漁港を撮るつもりなのでいいのですが明日もでは飽きてしまうし少しでも帰るのに都合がいいように戻ろうかと迷っていましたが結局戻ることにしました。
昨日の内に秋田市をぬけ一昨日泊まった本庄市のトイレ付き河川敷駐車場まで戻って来ました。今日は松ヶ崎漁港と道川海岸で一日過ごす予定で朝もゆっくり起きることにしました。心配していた低気圧による不安定な天気も治まったようで今日は曇りです。松ヶ崎漁港と道川海岸で午前中写真を撮り昼食も取った後、海岸沿線を走っているJR羽越本線を撮りたいと思い電車に乗ったりローカル駅の模様が撮れないかと時刻表を見ると一時間に1本の電車しかありません。電車に乗ることはあきらめてローカル的な駅をと思い、海岸沿線の4つの駅を車で見ましたがみんな新しくなっていてイメージ的な駅もありません。仕方がないから駐車場のある道川駅に車を止め1時間一本の電車を待って夕方までここで撮影をする事にしました。駅は無人なので出入り自由で時刻表に合わせて登り下りの電車が来るたびにホームに行きパチリパチリ。駅員が定期や乗車券を確認したり受け取ったり、そんな写真を撮りながら久しぶりにゆっくりした撮影でした。3時頃の酒田駅方面の電車に乗ろうとしたおばさんがホームに降りてきました。走り始めていた電車を手を挙げて止めようとしましたが残念ながら間に合いません。駅で「もう少し早ければ間に合ったのに残念ですね」と声をかけると「今年の冬なんかは雪が多くて電車もバスも全然あてにならず大変でした。」と言っていました。結局、1時間後の電車ではなく並行して走っている路線バスが3時半頃来るからそれに乗って行くとの事でした。
そんな撮影をしている内に陽も傾いてきて海の方を見ると綺麗な夕陽です。道の反対に渡り、しばし夕陽の撮影。のんびり、ゆっくりした撮影ももう終わりです。

今日は象潟漁港に泊まる予定ですが漁港入り口近くの国道沿いに象潟「道の駅」や象潟「ねむの丘」があり「ねむの丘」は夕陽などが眺められる展望台やレストラン、展望温泉「眺海の湯」があり夜9時まで入浴することができます。風呂代は350円で4階なので下の庭も見え、その先は日本海が広がっています。ゆっくり風呂に入り食事をして象潟漁港に行きました。漁港はすっかり暗くなり人影も見られません。トイレ近くの駐車場に車を止め後はゆっくりしながら眠るだけです。
昨日、寝る頃に少しぱらついていた雨も今朝は天気になっています。6時前に漁港を見渡すと一人の老漁夫が船を出す様子、早速行って写真を撮らせて貰いました。もくもくと準備をして出かけて行きましたが昼頃に帰ると言っていたので暑くなった10時頃、木陰に車を止めて写真のプリントをして昼頃、同じ船着き場に行ったらもう船は着いていて誰もいません。隣の船が夫婦で作業をしていたのでおじいちゃんの事を聞いたら「午後に又、来るよ」と言っていました。午後も撮影しながら気をつけていると船に誰かいます。居たのは奥さんで話をして今朝撮った写真を渡すと本当に嬉しそうに喜んでお礼を言われました。夕方近くに漁港に居ると朝の老漁夫が自転車で走って来ておもむろに紙切れを出し「今、住んでいるのは妻と二人だけだからいつでも遊びに来てくれ」と言って住所の書いた紙を渡されました。私も喜んでくれたのが嬉しくて「分かりました、又、来たときには寄らせて頂きます。」と言って別れましが奥さんに「まだ漁港に居るんじゃないか」と言われてお礼を言いにわざわざ来てくれた様な感じでした。
今日の朝も老漁夫を撮った後、隣の金浦漁港に行こうとしていた時に象潟漁港と海水浴場を挟んで同じ象潟漁港ですが小さな漁港がありました。後で聞くとここが昔からの象潟漁港で大きな漁港は後で出来た物でした。この漁港で朝も二組の漁師達が網から魚を出して魚をさばいていましたがその周りにはかもめが集まり本当にフォトジックで戻ってかもめがらみで撮りました。夕方もそろそろ暗くなるので象潟「ねむの丘」で食事をしょうと通ると朝と同じような光景が見られました。朝は夫婦を中心とした光景でしたが夕方は一人の漁夫が魚をさばいている所にかもめが群がっています。逆光で人物をシルエット気味にして漁港をいれるとなかなかいい雰囲気です。又、一つ宝物が見つかった感じで今日の撮影も満足気味でした。
今日は隣の吹浦漁港を朝、撮影して帰るつもりでした。昨日の朝、昔からの小さな象潟漁港でかもめが群がる作業風景が良かったので今日もそこを撮ってから帰ることに変更して象潟漁港に泊まりました。朝6時前に起きて、そう言えば昨日、漁港の人たちが「ここは景色もいいのでカメラマンの人たちも大勢来る」と言っていたのを思い出しました。あまり景色は撮らないので気にしていませんでしたが雪を抱いた鳥海山をバックに松の木の丘とその前の漁船、いい景色です。まあ一枚撮る価値はあるなあと思って撮ったのがこの写真です。
この後、すぐに小さい方の象潟漁港に行くと一隻はもう網から魚を外す作業をしています。昨日の朝、中心的に撮らせていただいた夫婦の船はまだ見えません「間に合ったと」思いながら船を待っている奥さんの所に行くと「あれ、まだ帰らなかったの」と言われたので「ここが良かったから又、象潟に泊まったんです。」と言って昨日いっしょにプリントしておいた二人の写真をあげました。奥さんも喜んでくれて「この写真、棺桶に入れるから」などと冗談を言っていました。その内に主人の船も帰ってきて魚を船から降ろして作業を始めると今まで向こうの海岸に群れていたかもめもいつの間にか群がり始めました。昨日も広角で近寄って撮ったのですが思うようにかもめの迫力が伝わって来なかったので今度はノーファインダーでもっとカメラを寄せて撮ったりしましたが昨日より作業時間も少なくあっという間に撮影は終わったという感じです。奥さんには「今度来るときは奥さんも連れて来なければだめだよ。」とか「魚を持って行け」と言われましたが魚は遠慮して断り、「来年も来るかもしれませんがその時はよろしくお願いします。」と言い、気持ちよく撮影させて貰った事へのお礼の言葉も言って別れました。当初の計画通り1週間ぐらいという日数も過ぎて今日はこの後帰る予定です。日本海の漁港、イメージ的な所は少なく、夫婦などの個人的な作業風景も少なくなっていて探し出すのが大変でしたが偶然見つけたりという行き当たりばったりないつもの撮影スタイルで出会いを求めての撮影旅行だったと思います。初めてのぶらり車中泊の一人撮影旅行を終えて自信もつき、これから1年に1回位こんな撮影旅行もいいなあと思った今回の日本海の旅でした。