一昨年に能登半島の漁港を撮影で回りました。その時に出会った珠洲市の宝立七夕キリコ祭りと飛騨高山の手筒花火、予定外だったので気になりながらも撮影はしませんでした。気になっていた2つの祭りをどうしても撮りたいと思って、今年は能登半島と高山に出かけました。
8月6日が前夜祭、7日がキリコ祭りです。6日の朝早く出発して能登半島の先端近くの珠洲市にはたどりすかないので5日の夕方に家を車で出ました。途中、高速長野道の松本インター前のサービスエリアで泊まり、珠洲市見付島(軍艦島)に着いたのは6日午後3時半頃でした。
朝方曇っていた天気も晴れて見附島は午後の光の中で綺麗に浮かび上がっています。観光客はあまり多くなく見附島を背景に記念写真を撮ったりとのんびりとして静かな風景でした。
前夜祭と言ってもどこでどんなことをやるのか分からなかったので珠洲市役所の観光課に行って聞いたところ「特別に前夜祭というのはないがキリコの周りで酒盛りするぐらいだ」と言われました。HPには前夜祭と書いてあっって何か行事でもあるのかなと思っていたのでがっかりです。場所は見付島の隣の鵜飼漁港近辺と聞き、行ってみると大きな高いキリコが所々に置いてありました。この前はこのキリコを見て大きさや高さにもびっくりして気になりながらも祭りのその日に先に進んでしまいました。明日はこのキリコが8基位、夜の海に入ると言うことで楽しみです。
夕方、明るい内からキリコの周りにゴザを引いて祭りに参加する男衆や子供達が集まり酒盛りをしています。
明日の本番に備えて暑気払いと言うところだと思います。昔からの伝統的な漁村の祭りなのでしょう、女性(奥方)達は酒盛りには参加していませんでした。昔は結婚式などにも女性は裏方に回り宴会の席には出席出来ないのが当たり前でした。こんな所にも昔の名残りが残っているのでしょう。子供達はキリコに登り、太鼓を叩いてはしゃいだりと楽しそうに遊んでいます。

見附島の広い駐車場で泊まり、朝方は午前5時前に土砂降りの雨音で目を覚ましました。最近、特有の豪雨です。今日はキリコ祭りの本番日、こんな降りでは撮影もおぼつかなく、せっかく遠くまで楽しみに撮影に来たのにと思いながら外に出ると海岸は大きな水たまりが出来て人は一人も居ませんでした。
午前5時過ぎに見附島隣の鵜飼漁港に行ってみました。個人の船で魚を揚げている漁師さんは2人位しか居ません。市場の前には大きな船が留まっていて10人ぐらいの人達が作業をしています。声をかけながら写真を撮らせて貰うと水揚げした魚を選別している様子でした。
初めはいろいろな魚が混じっているので種分けしているのかなと思っていましたがよく見るとほとんどアジでした。選別は大きさをそろえていたのです。貴重な雨の漁港の作業風景ですがなかなか写真的になると難しさも感じながらの撮影でした。
漁港の作業も終わった7時頃にコンビニに寄って朝食を買い又、見附島の駐車場に戻りました。雨は依然として大降りなので車でゆっくり仮眠を取ったりして時間を過ごすより方法がありません。漁港で聞いたところではキリコ祭りは最後に海に入る祭りなので雨で中止は無いと言っていました。しかしこんな大降りでは撮影もままならないしせっかく此処まで来ての大雨には困惑気味になっていました。午後になって駐車場の隣にある能登路荘で雨の露天風呂から見附島を眺めながらのんびりと時間をつぶして雨が止まないかと思っていると午後2時過ぎには小雨になり何とか撮影も大丈夫のようです。外に出ると祭りの関係者は雨の中でも竹を飾ったりしてキリコ飾りの最後の準備をしていました。
キリコは何基もあって奥の方のキリコでは祭りの前の神主さんによるお祈りが行われていました。小雨が降っているのでお祈りをする神主さんが濡れないように大きなビニールを4人て持っていたりして素朴で珍しい祭りの風景を撮ることが出来ました。
大きな大人のキリコとは別に手作りの小さめのキリコが2基あります。これは高校生や中学生が担ぐ子供用のキリコで祭りが始まる前に担ぐ練習を何回もしていました。慣れていないのでなかなか担ぐことが出来ず数メートル担いでは止まり、大分苦労しているようでした。子供用と言っても大分、重そうです。中には女学生も混じって一緒に担いでいました。
子供達が担ぐ練習をしている様子をこれから始まるキリコ祭り見物のおばあさんが二人で車椅子に座って見ていました。街の祭りと違ってのどかな風景です。中心部の広場に来るとキリコ祭りに参加する女学生や男子高校生が担ぐときに肩に乗せる特別な座布団みたいな物を持って防波堤に寄りかかったり座っていました。写真的にも面白いのでパチリ、パチリ。高校生達も素朴な表情で気に入った写真になりました。
夕闇が迫る午後7時頃になると各地区にあったキリコが中心の広場に向かって移動を始めました。大人達のキリコは高さ12メール超、重さ2トンで100人以上の担ぎ手が必要とされています。現在は担ぎ手も少なくなってなかなか思うように長く歩けず休み休みの移動となっています。
暮れなずむ空に灯りのついたキリコはカラフルで雄大さもあって見応えがあります。
何基も集まってきた広場では大きなキリコを担いで何回も何回ももみ合う姿は迫力があります。それにしてもあの大きなキリコを担いでもみ合うのは本当に大変な事で年に一度のキリコ祭りに賭ける男達の情熱には圧倒される物がありました。
広場には特設舞台も作られて子供達が太鼓の演奏や踊りを披露したりと宝立七夕キリコ祭りを盛り上げています。キリコの中断には太鼓が置いてあって大人達はキリコを担ぎ、子供達は太鼓を叩いていました。踊りや太鼓叩き等もうまく、この祭りのために練習を重ねた成果が現れています。大人も子供も一体になって祭りを盛り上げ楽しんでいました。
午後9時半頃にはもみ合っていたキリコも広場に勢揃いしました。片面は文字が書いてあり、片面は絵が描かれてあります。子供用のキリコ2基も入れて10基位が勢揃いするので壮大で見事でした。
勢揃いしたキリコが海に入るために海岸に移動を始めて午後10時過ぎに1基、2基と海に入り始めました。沖には篝火が焚いてあり、海岸からの大きな証明に照らされて、その光景は迫力があります。大分、遠浅なので結構沖に行っているのに人は立っていてキリコには発砲スチロールを付けて浮くようにしてあるようでした。
キリコの並んだ海の後ろから水上花火があっちこっちで上がり見た目にも音響的にも迫力満点です。後ろに上がった花火を中心にあっちこっちとカメラを振りながら無我夢中になって撮っています。最後の方になると今度は突き出た堤防の方から大きな花火が上がってきました。なんか無我夢中で完全に撮らされている状態です。11時頃に花火も終わりキリコが陸に上がってきます。そんな光景も撮影したり、又、広場に戻ったキリコを担いでもみ合っているのを撮影したりして祭りが終わったのは夜の12時も回っていました。帰りのキリコは案外早く移動しています。見るとキリコは担がず何本ものロープで引きながら滑らせていました。キリコ担ぎは奥方達はやれないけれど帰りのロープ引きは奥方達も参加できると言いながら嬉しそうにロープを引いていました。
午前9時頃に見附島の駐車場を出て昨日の祭りの場所を通るとあの大きなキリコは全基とも見あたりません。「えっあの後、片付けたの?」と言う思いでしたが今日改めて片付けるより人出のある当日に片付けた方がいいので疲れていても一気に片付ける習わしかと思いました。その後、能登有料道路と東海北陸道を通って午後2時頃に白川郷に着きました。早速、白川郷の湯に入り出てくると又、あの特有の豪雨です。一昨年に来て観光もしているので観光はいいけれども民家に灯がともった薄暮の頃の写真を撮りたいと思っていました。しかし肝心な頃に大雨ではと思っていたところ夕方には小雨になり撮影の途中で雨が止んできました。本当は雲のない紺碧の空を期待していましたがまあまあ運が良かったと思わざるを得ませんでした。
昨日は白川郷の道の駅に泊まり、午前9時頃、出発して飛騨高山には10時頃に着きました。今日の高山は曇りなので一昨年のようには暑くなく、宮川沿いの朝市や古い街並みの観光地も大勢の人達が行き交っていました。そう言えば今日は日曜日です。キリコ祭りも高山の手筒花火も日にちで行う祭りですが今年は高山は丁度、日曜日に当たったようで花火観戦の人達もいつもより多くなってしまうのがちょっと心配でした。
高山の朝市や古い街並みなど、ゆっくり観光をして昼食後に手筒花火を上げる宮川の場所に来ました。宮川の中に鉄骨の柱を組んで手筒花火を上げる足場が出来てこれから最後の準備に入っているようでした。早い人は席取りで座っています。花火の打ち上げは午後7時30分から9時の予定なのでまだまだ時間は早すぎます。人は居ないのですがすでに川の両サイドは場所取りの敷物で一杯になっていました。
撮影する場所を探していると川のサイドに木が何本か植えてあり、その前に一人ぐらい立てるスペースがあります。さすがにそこは場所を取る人は居ませんでした。それでも念のためと午後4時頃には木の前の手すりにタオルを巻いて場所取りの印をする事にしました。夕方5時過ぎに所定の場所に行くと若い人が居てその人も隣町のアマチャカメラマンでした。若いカメラマンも木にもたれながら写真を撮るつもりだったようです。二人でいろいろ話しながら待つこと2時間近く、ようやく7時過ぎになって橋の上で太鼓のセレモニーが始まりました。当たりは暗くなりもうすぐ手筒花火の打ち上げです。
手筒花火の打ち上げる場所は4ヶ所あって、4ヶ所同時に花火を上げます。見物するだけの人は全体が見渡せるので迫力があると思いますが写真を撮るとなると1ヶ所に集中してアップ気味に撮るしか有りません。ピントを合わせてシャッターチャンスを逃さず、言うことは簡単ですが暗闇の中に花火の光で照らされた動く顔、なかなか難しい物です。更に困ったことは顔がこちらを向いてくれません。川は両サイドがあるので仕方ないわけですが何故かほとんど向こうを向いてしまいます。
午後9時頃になり花火の打ち上げもクライマックスを迎えました。関係者が一同勢揃いをして挨拶の後に4ヶ所だけでなく10ヶ所以上で一斉に豪華に手筒花火を打ち上げて祭りは終了しました。雨の心配も有りましたが運のいいことに最後の10分前頃から少し雨が降り出して花火の打ち上げには全然支障は有りませんでした。手筒花火の撮影は初めてですが高山の手筒花火は宮川の上で上げて見物する人は両サイドの川岸からです。見物しやすいし写真撮影もベストでした。しかし初めての撮影では事情が分からなく、やはり何回か通わないと気に入った写真は撮れないと思いました。花火師が対岸に顔を多く向けるのは対岸に関係者が多く、メインは対岸だったようでした。

前日は花火の打ち上げ後に高山に近い、道の駅に泊まりました。10日は道の駅の新鮮で安い果物や野菜を買って朝の9時頃に高山を出発、家に着いたのは午後6時頃でした。今回の撮影旅行では集中豪雨が多く心配しましたが結果的には幸運に恵まれた感じで撮影も問題なく、無事終りました。感じたことはPキャン(パーキングキャンプ)などと言う言葉も出来た位にサービスエリアや道の駅での車中泊が増えたことにはびっくりしました。