今年の1月は馬鹿陽気と言えるほどの暖かさでびっくりしていましたが2月は天気もあまり良くなく暖かい日和も数えるほどでした。それにも増して3月はそろそろ暖かくなるのかな〜と思いきや2月よりも寒く「暑さ寒さも彼岸まで」のごとくやっと彼岸過ぎて暖かくなりました。今年は暖冬には変わりないのですが始めにあまりの暖かさだったので2月、3月と寒く感じたのだと思います。昨日、今日は久しぶりの撮影日和になり京島に出かけることにしました。
京島は去年1月に来ているので1年ぶりの撮影になります。午前11時ごろ、京成線「押上」駅を降り、少し歩いて京島に着きました。京島に一番近い駅は次の「曳舟」駅ですが一駅で料金が変わってしまうのと「押上」駅から歩いても京島はすぐなのでいつも「押上」駅で降りて歩きます。この東武亀戸線の踏切を越えると京島2丁目です。今日はどんな出会いがあるのかなと思うと楽しみになります。
京島もまだまだ古い建物が多いのですが新しい建物がどんどん増えてきて昔の名残がだんだん少なくなってきています。古い建物が取り壊されたまま、駐車場や空き地になっている場所も少なくありません。この空き地には花壇を作って花などが植えられていて逆光に輝いた花々は殺伐とした中にも心の安らぎを感じさせられるような「ほっと」する空間になっていました。
京島の魅力はなんと言っても昔ながらの建物や暖かみのある人々の下町風情です。あっ、この建物、この路地と見慣れた所がまだまだ残っているので又、新しい視線で撮影します。あっちの路地、こっちの路地といつものように丹念に回っていると買い物車が家の前にあり逆光に光って魅力的でした。角度を変えたりして何枚か撮っていると家の中からおばあちゃんが出てきて買い物に行くようです。買い物車に手をかけてこちらに向かってきます。これだから出会いはわからない、こんな思わぬ好機に出会うのもスナップ写真の楽しみです。気持ちよく歩いているうちに3丁目の「キラキラ橘銀座通り」にきました。商店街は人もまばらでまだ静かな雰囲気でした。
静かな商店街はさほど被写体もなく取りあえず一回りしょうと思い歩いていました。何かお店の前で写真を撮っている人達がいます。お店は果物屋さんでスーツを着た奥さんが旦那さんと娘さんの写真を撮っています。次に旦那さんが奥さんと娘さんの写真を撮り始めました。今日は娘さんの卒業の日らしく学校から帰って来て店の前で記念写真を撮っているところでした。早速、「撮らせてください」と頼むと承諾してくれたので旦那さんの隣で一緒に撮らせてもらいましたが全員一緒の写真は撮れないと思い「撮ってあげましようか?」と言って全員の写真を撮ってあげました。お礼を言われそのまま終わる所でしたがこんなほのぼのとした写真は私も撮りたいと思い、思い切って「私にも撮らせてもらいませんか?」と言うと「いいですよ」との事、2枚ほど撮ってお礼を言い歩き始めたがこの写真は写真コンクールなどにも出したいと思い「この写真使っていいですか?」と改めてお願いしました。ご主人は快く承諾してくれて奥さんも「ちゃんと修正してくださいね」などと冗談を言いながら許していただきました。いや〜今日は家族愛のある、ほのぼのした満足の写真と暖かい人の心のふれ合いが感じとれたひとときで心が熱くなる瞬間でもありました。本当に有り難うございます。
果物屋さんで写真を撮らせてもらい、気分良くして一休み、午後1時近くになったので昼食をとって又、撮影を始めたのは1時半頃でした。京島も公園はいくつかありますがここは一番大きな公園のようです。ぶらんこや滑り台などがあり大勢の子供たちが遊んでいました。滑り台の下で滑ってくる子供たちやぶらんこに乗っている子供たち、楽しそうに遊んでいる姿を何枚も撮りましたがなかなかこれはという写真が撮れません。男の子供たちが話しかけてきて「この奥の部屋の中にネズミの死骸があるよ」などと言って細い路地の中に入っていきます。「家の中じゃ入れないよ」と言いながら路地から出てくる子供たちをパチリ、パチリ。これはちょっといいかな、そんなことをしている内に女の子が二人、公園から道路に向かってシャボン玉を吹いているのが見えました。丁度逆光になっていてシャボン玉が綺麗です。「こっちを向いて吹いてくれる」と頼んで吹いてもらい飛んでいるシャボン玉を見ながらパチリ、パチリ。雰囲気作りがあまりうまくないのでなかなか表情までは満足いきませんでしたが日射しに浮かぶシャボン玉と子供たちの遊ぶ姿が撮れました。
公園を離れてまだ回っていない所を又、丹念に撮影しながら歩きます。古い建物の前で人の来るのを待って撮影したり、光線状態のいい建物の面白い部分をアップで撮ったりとそれなりに興味のある被写体は多い物です。どこに行ってもそんなにシャッターチャンスや興味のある物などは多くないのでその点、京島はだんだん昔の面影が無くなってきたとはいえ、まだまだ魅力のある町だと思います。
斜光の差し込む十字路にさしかかった時、これから買い物に出かけるのか一人のおばさんが
歩いてきます。光もいいし、おばさんが光の当たる十字路にくるのを待って2枚ほど写真を撮っているとおばさんがこちらに寄ってきます。そのうちバックから一つの飴を取り出して私にくれました。特別話しかけるわけでもなく、にこにこと笑顔で飴をくれるのです。「あっ、いいんですか」と言って飴を受け取りお礼を言うとそのまま歩いていきました。京島はなんと人柄というか気持ちのいい人達が多い町だなあとつくづく思います。
大分、陽も西に傾いて赤みがかった光線になり一番魅力的な時間になってきました。路地から差し込む光と下町の古い工場、いい舞台ステージです。あとは演じる主役の出番を待つばかり、待っているとそれなりの人が時々やって来ます。舞台の上はスポットライトを浴びた主役たちが行き交い飽きることを知りません。一枚は手前の路地から差し込む光と駐車場あたりから差し込んでいる光の両方に人物が偶然にきて二人の競演という写真も撮れました。
撮影も終え、「押上」駅に来た頃は時間も6時近くになり、陽ももうじき沈む頃になってきています。今日の京島撮影はほのぼのした家族の写真や子供たち、町角のスナップなど思う存分に写真が撮れたという感じで久しぶりの充実感を味合うことができました。それにしてもさすが下町京島、人の心の温もりや下町風情が脈々と残っているが感じられます。銀座、新宿などでは味合うことができない、人とのふれ合いがあって本当に気持ちのいい1日の撮影となりました。果物屋さんの家族の写真を持って近い内に又、京島に来ようと思いながら今日の撮影を終わりました。