季候のいい10月、撮影にも最適と思いきや今年は台風が毎週のように上陸し晴れた日は数えるほどしかありません。今日は久しぶりの晴れの日です、12月までは意識的に夜の写真をと心がけているので今日はどこにしようかなと思い、浅草に行くことにしました。
夜の写真と言っても出かけるところは決まっています、銀座、新宿、浅草や横浜です。浅草は商店の閉まるのが早いので5時頃から暗くなる12月頃が適しています、5時頃から7時過ぎまでの2時間位が撮影に最適な時間です。
今日はまだ時期的には早いと思うのですがなんとなく浅草に行きたいと思い、出かけました。
3時半過ぎに浅草に着き、浅草寺前に行くと雷門の前は外国人の団体観光客達で賑やかでした。
最近は中国、韓国の人達が多く見られ、経済の繁栄が良く現れていると思いました。
仲見世を通り、浅草寺まで来ると線香の煙や清水で口や手を清めている人達が大勢います。
しかし日射しは当たらず逆光を使いながらの撮影は出来なく、まだ斜光が残っている境内に上がって束の間の撮影となりました。
この時間の光はいいですね、今度はもう少し早く来て斜光のあたる写真撮影をしたいと思いました。
夕方から夜に変わる時間帯になり、一休みと浅草寺そばの公園で缶酎ハイを飲んでいると一人の男の人が話しかけてきました。
九州の小倉出身で5人兄弟の末っ子だそうです、親は長男でないので手に職を付けさせようと建具屋に就職させたそうです。5年間の弟子修行の後でお礼奉公してその内に東京に出てきて板橋の方でも働いていたとのことでした。
いつの頃から、無職になったのかは聞くことが出来ませんでしたがぽつぽつと物静かな口調で自分から身の上話を語り掛けてきます、人恋しさや寂しさで話しかけてきて自分の身内や故郷を振り返っているように思われました。
年齢的にも私と変わらないと思い年を聞くとやはり同じ申年生まれだと言っていました。
「これから寒くなると大変ですね」と言うと「そうなんですよ」と言って笑っていました、穏やかな表情で物静かに話す姿はなにかあきらめと悟りのような物が感じられました。
男の人と別れ浅草寺をぬけてレジャーランド「花屋敷」の方に来るともう商店は閉まっています、時間は6時過ぎ、しかし花屋敷前は長蛇の列です。なにか催し物があるようなのですが想像がつかず入り口の係員に聞いてみました。今日は6時閉館過ぎてから会社の貸し切りで並んでいる人達はその会社の家族の人達だと言います。花屋敷は6時閉館でその後希望があれば貸し切りで営業しているみたいです、どこも厳しいのでいろいろな努力をしているみたいです、テレビでも花屋敷の経営奮闘ぶりが放映されていたのを見たことがありました。それにしても今は珍しくなった会社主催のイベントをやっている会社が有ることにも感心しました。入り口からずうと花屋敷を取り巻く人達は60名人から70名位の家族が並んでいたように思われました。
花屋敷を過ぎて映画館や大衆演劇館、寄席のある六区通りに来るとまばゆいばかりの明るさです、でも人通りはあまり無く静かな通りになっています。
日曜、祭日は競馬の場外馬券場があるので昼は大勢の人で溢れていますが普段の夜は一人で映画の看板に見入る人やホームレスの人、時々行き交う人々位です。
なかなか撮影の被写体がありませんが出会いを求めて何回もぶらりぶらり。
六区通りからいろいろ回って浅草寺に近い大衆演劇場「木馬館」に来るとまだ夜の部が開催されているようです。
夕方4時少し前は昼の部が終わりお客さんが出てきたところを役者達が表に出てきてお礼の挨拶をするのでその時だけは大勢の人で華やかです。
昼もやっていますが夜も館の脇通りでは看板の制作を館の人達がやっています。
今は休憩中みたいで一服していました。
独特な書体は歌舞伎や大衆劇場特有な物です、館の従業員は何でも自分たちの手でやるので看板も当然仕事の内ですが見事な物でいつもながら感心します。
歩いている内にまた花屋敷前に来ていました、回りは店も閉まって真っ暗なのに花屋敷だけが明るく観覧車やジェットコースターなどが動いています。
先ほどの人たちが夜の遊園地で乗り物を楽しんでいます、静かな中にここだけが賑やかに動いているのはなにか不思議な世界が感じられます。
どんな会社がイベントをやっているのかちょっと気になると共にまだまだこの厳しいせちがない時代に社員、家族のため慰労を兼ねたイベントを行う会社が有ることになにかほっとするものを感じました。
時間は8時少し前、でも浅草はもう遅い時間のように思われる位に静かです、今日はもう帰る時間だなあ。